長くなりそうなので、まとまらないまま自分の日記に移動。
元ネタ
福耳コラム 2007-11-03-Sat 作業所のクッキー
私が突っ込んだのはこのへん。
「障碍者がつくったということを売り物にしてほしくない」という作業所の意向
それを実現できるのは、価格なり品質なりといった通常の商品の特性でそれなりの差別化ができているか、勝負できる見通しがある場合だと思うわけですが、「作業所のクッキー」を読んだ限りではそんな差別化ができているどころかできる見通しも、作業所側のやる気もないまたは品質や価格で渡り合う能力がないように見受けられたわけで、それだったらというわけで書いた私のコメント。
ぶくまで書くのも何なのでコメントします。m(_@_)m
>「障碍者がつくったということを売り物にしてほしくない」という作業所の意向もある。それはなるほどわかるけれども、まずものづくりのコストパフォーマンスで競争水準に達していないと、それしか訴求ポイントがない
水準の品を作る能力が作業所側にないならば、あとはダンピング(格安賃金でも合法)に走るか、障害者謹製を売りにするかの二択でしょう。どっちもやりたくな
いのでしたら、冷たいようですが、提供している売り場や手間の割にまっとうな利幅が稼げないとして取扱をやめるのが常道かと。m(_@_)m
私が作業所の関係者だったら、臆面もなく障害者謹製を売り物にしますけどね。それが少しでも高く売って利用者に利益を還元する最も手のかからない方法だから。
たとえば作業所との交流会とかをうまく(交流参加者は同情を誘いやすい人を差別的に厳選するなどの手を講じます。)企画してやればそれなりの効果は上がるでしょう。
(2007/11/03 20:23)
と書いた。もっとも元の書き込み(「作業所のクッキー」)には
「障碍者がつくったということを売り物にしてほしくない」という作業所の意向もある。それはなるほどわかるけれども、まずものづくりのコストパフォーマンスで競争水準に達していないと、それしか訴求ポイントがない、と普通はなりますわね。
という指摘がなされているので、新しい提案をしたわけではなく、無い物ねだりをするのではなく開き直れと言っているに過ぎないわけですが。
これに対して、現状はダンピングと障害者謹製で売るのの両面作戦のようなのもであることという紹介がされ、その上で、「交流参加者は同情を誘いやすい人を差別的に厳選」して
誘える同情はあさはかないっときのものだと思います
という返答が来る。
しかしそれは、作業所側が無い物ねだりをしている以上仕方がないというか割り切らざるを得ないとか思うわけだ。もっとマシなやり方はないのかという問いに対しては、
>それよりベターなプラクティス
価格と品質を大手製菓メーカー並みに両立させるのは無理としても、あまたの手作りベーカリー並の品質を確保するのはおそらく不可能ではないでしょう。もっともそれにはかなりの経営能力が要求されるはずで、それだけ能力の高い経営者がいたとしても、よほ
どの事情がない限り作業所の経営に手を出すようなことはしないでしょう。
それが、↑に書いた二択を強いられることが多いであろう理由です。
>それで誘える同情はあさはかないっときのものだと思いますが。
否定はしません。というか、同情を売るというのは買い手が見たがっているないし見えると期待している姿を見せて対価をいただくことです。あさはかでいっときでない同情はもは同情ではなく理解でしょう。理解が得られるならばそれに越したことはありませんが、それはクッキーを価値以上に売る(同情を付加価値とす
る)ことと両立しないでしょう。たとえばクッキーはあくまで市場価格並に安く売って、別途寄付を募るみたいなやり方で収支均衡しなければ理解が得られたことにはならないと考えます。
(2007/11/03 23:31)
と返した。(注:最初に「水準の品を作る能力が作業所側にない」と表現した作業所の、企業としての経営能力について私はかなり強い制約条件であろうと推測した上で、ほぼ前提条件として扱っています。対して、今気づいたのですが、fuku33氏は職業柄そこを変えたいと考えている様子が、このやりとりを改めて見返すと見えるようです。m(_@_;)m)
経営管理経験豊富な経営者が福祉分野から縁遠くなりやすいというのは、確かにこれまではそうだったと思いますが、今後はどうでしょうね。将来については軽々に判断できません。
(2007/11/04 00:06)
返答のこの部分については、インセンティブが変わらない限り今と大きく事情が変わることはないだろう、というのが私の考えです。具体的には、労力に見合う金銭が得られるようになるか、さもなくば福祉施設の経営者の社会的評価が今よりも大きく上がるかのいずれかが起きない限り、それなりの経営者が福祉施設に絡むケースは身近に障害者がいる場合にほぼ限られるだろうということです。
この後、スワンベーカリーの話がコメントされます。白状しておくと、詳しく知っていたわけではありませんが、障害者を雇ったパン屋の話は頭にありました。(クッキー話の段階で「あまたの手作りベーカリー並の品質を確保するのはおそらく不可能ではないでしょう。」と書いているのはそれを意識したもの。)
クロネコの小倉氏がなぜ障害者に絡んだのか、また商売がなぜパン屋になったのかは知りませんが、対象にした障害者の能力でできる作業は何か、ということについて熟知した上で何を商品にするか決め、どの工程にどのような障害者を充て、どのように仕事をしてもらえば他のメーカー並みの品質や数量が捌けるかを練った上でパン生地を練り始めただろうことはまず間違いないでしょう。裏を返せば、世の仕事の中から、対象と考えた障害者の限られた能力だけで挑める仕事なり工程を見つけ出し、それらを組み合わせてできる商売の一つとしてパン屋を見つけたのではないかと想像しています。
知的・精神系の障害者の能力を活用して並の給料を払う例は他にもありますが、いずれにしても、そのような作業所ないし企業の経営者には↑のような思考をする能力あるいは高度なマネジメント能力が必須です。
また、商業ベースに乗せる場合、手作りパンならたとえば大がかりなオーブンだとか粉練り機などのそれなりの投資も必要になります。投資失敗のリスクを負いたくなければ安価な家庭用機器でちまちまクッキーを焼いて売ることになるので、生産も利益も上がらないことになるわけです。(そうでなければほとんど投資不要のかわりに労賃も激安の内職仕事を請けることになる。)
世の多くの人はそれほどマネジメント能力を持ち合わせておらず、リスク許容度の高い人も少ないので、その結果としてたいていの作業所は障害者謹製の手工芸品や手作りクッキーを売るか、内職下請け所をすることになるわけです。orz
経営学方面の素養はないのでわからないのですが、自分の作業所に通う利用者の能力と相談の上で、世間と勝負できる商売を見つけ出して経営する能力といったものは、教育なり訓練なりで身につくようなものなのでしょうか。短期(数年程度)で身につくのであれば問題の作業所の工賃アップも夢ではないでしょうが、それが才能に大きく依存する能力なのであれば、かつ障害者謹製を売りにしたくなければ利用者には申し訳ないけれども諦めてもらう方向を追求するのが無難かと思うわけです。
ところで、人手不足の状況であればそれだけ手をかけて障害者を育てる価値があると見なされるでしょうが、より能力の高い失業者があふれかえっているデフレ下では障害者を雇うインセンティブはどうしても下がります。才覚のある経営者に障害者を雇わせるには、労働の需給をある程度タイトにする(マイルドインフレにする)必要があると思われます。
くそ、これ書いてる途中で小沢氏が辞意撤回。それも書きたかったがこっちが止まらず断念。orz