ネットのどこかで、作中の、片付いていない貧困「家庭」と普通の家庭の整い具合の対比について語られていたので、貧困問題と片付かない問題がテーマの一つだったら見ておかなければなるまいと思い立ち、自転車でも足の届くシネコン(AMCなかま16)で上映されているのをおととい確認し、昨日見てきた。
問題の対比は確かに見られたが、主題となっている「家族」の方が圧倒的に取り上げられる比重が大きいので注意していないと見過ごすだろう。
他にも、注意してみないと見過ごすと思われるポイントが俺にも幾つか見つけられた。たとえば、パンフレットの間取り図の下の解説に「居間 隅にはまだアナログテレビが置いてある」というやつ。このテレビは主役ではないのでピントが合わせられることはないが、ボケた状態でもはっきりわかる。
おそらく他にも山のようなこだわりが盛り込まれているのではないだろうか。可能なら、何度か見て反芻したい映画と言える。
ネットでは、万引きだのなんだのといった日本のはずかしい所をうんぬん、という批判もあったようだが、万引きその他この「家族」のメンバーが起こす犯罪を肯定している筋立てになっているわけではないのでそれは当たるまい。
この作品を社会派のそれと思って反発している人もいるのかもしれないが、実際にあった幾つかの事件から着想を得たストーリーではあるものの、誰かまたはシステムを悪ものにしているとかある方向に誘導しようといった感じは受けない。
パンフレットの監督インタビューには
貧困家庭を描こうとか社会の最底辺を描こうとか、そういった意図はありませんでした。むしろそこにかろうじて転がり落ちないために、今回の家族はあの家に集まることになったんじゃないかなって。
とあるのだが、奇妙だが安定した「家族」生活が父母(仮)の失職などによって転落が避けられなくなったかに見えた時、転落事故(謎)が直接のきっかけとなって「家族」は崩壊に向かう。
なぜああいう生活をしていたのかという背景や崩壊の必然性が淡々と語られていくのだが、それだけに胸の締め付けられ方は強烈だった。
「父親」に関してはそのへんが見えなかったのだが、たぶん天然という設定なのだろうと思う。
※ネタバレしても怒られない時期が来たらまた何か書くかもしれません。とりあえず、凄い作品なので可能な人は見ておく推奨。