数年間古本屋を探し続けて、最近やっと発見。
軍の横暴を押さえる(という裏の目的の)ために旧平価解禁を企てた(新潮文庫版P.34ほか)というストーリーになっていますが、それ、控えめに言っても"政策割当ての間違い"だろ。orz
物語の構成上、新平価解禁論やインフレ論についてはほとんど触れられていません。(一番詳しいパートはP.261〜263か)
極めつけは、この文庫本の解説を「毎日新聞論説委員長」赤松大麓氏が書いておられることで、やはり蛙の子は蛙かという感想を持ってしまいました。orz
興味を引かれたのは、緊縮(減俸)するにしても高所得者により重い負担を、という発想があったらしい(P.230)ことで、昨今の、専ら貧乏人を絞って恥じない風潮を鑑みるに隔世の感である。(;_;)
239ページに引かれている当時の安達内相の言葉(原出典は朝日新聞昭和四年十月十八日 P.393)をまた引きしよう。
農村が極度に疲弊して居る状態に比べれば、この度の減俸は当然の事で国家の危急存亡の際これ位の減俸はなんでもない。しかも下級官吏は施行せず一千四百円以上の官吏に累進して減俸するのだから至極公平である。(斜体はBUNTENによる)
この感覚を、逆進性が強いと言われる消費税を公平と称してはばからない昨今の風潮や、当時の農民に類する困難に見舞われている失業者などを甘えた存在ないしなまけ者と見る空気と比べられたい。
作中には小泉純一郎氏の祖父、小泉又次郎氏が出てくるが、その人情味あふれる描かれかたを見るにつけ、酷薄な印象の孫純一郎氏がどのようにして生まれたのか不思議でならない。