定期診察が終わって薬局に薬をもらいに行く。
椅子に座って待っているところに、杖をついた女性が入ってきて左側の窓口で処方箋を差し出した。
その後、向きを変えて私の右にある空いた椅子、そして、ほんのちょっとだけ彼女の近くにある私の椅子を眺めて一瞬の間。
よたよたと入ってきた方だったので、椅子一脚分の歩行もつらいのだろうと判断して「どうぞ」と声をかけ、隣の椅子に移動する俺。
読んでいた冊子の続きに目を落とした俺に、横に座った女性が雑談を振ってきた。
いや待ってくれ俺は実のところちょー非コミュで雑談を受け流すのは最も苦手なことの一つなんだ、と心で叫びつつ、俺が変人だと悟られないようにない知恵をぶん回して必死に応対する。そんな苦労を彼女は知るよしもないというか、下手をすると席を移ってもらったお礼のつもりで話をしてくれているのかもしれない。藪蛇とはこのことだ。
と、調剤が終わって窓口から呼び出され、俺は虎口を脱した。